ε – δ 論法 (収束しない証明)
1.ε-δ論法 (収束しない証明)
\[ \lim_{x \to a} f(x) = b \]
↓ \(\varepsilon – \delta \) 論法で書き直し
\[ \forall \varepsilon > 0 , \exists \delta > 0 \quad s.t. \quad \forall x \in \mathbb{R} , | x-a | < \delta \to |f(x)-b| < \varepsilon \]
つまり、
\[ \lim_{x \to a} f(x) \neq b \]
を証明するには、上記の \( \varepsilon – \delta \) 論法の否定なので、
\[ \lim_{x \to a} f(x) \neq b \]
↓ \(\varepsilon – \delta \) 論法で書き直し
\[ \exists \varepsilon > 0 , \forall \delta > 0 \quad s.t. \quad \exists x \in \mathbb{R} , | x-a | < \delta \quad and \quad |f(x)-b| \geq \varepsilon \]
となる。
つまり、
「任意の \( \delta \) に対して、\( | x-a | < \delta \quad and \quad |f(x)-b| \geq \varepsilon \) を満たすような、特定の \(x , \varepsilon \) がある。」という事です。
なので、
「どれだけ色んな \( \delta \)を試しても、\( | x-a | < \delta \) の範囲で議論しているにも関わらず、ある特定の大きさ \( \varepsilon \) があり、収束しないという事です。」
では、具体的に問題を解いていきましょう。
\[
f(x) =
\begin{cases}
x+1 \quad (x \geq 0) \\
x-1 \quad (x < 0 ) \\ \end{cases} \]
となる関数に関して、
\[
f(x) = \lim_{x \to 0} \neq 1
\]
を \( \epsilon – \delta \) 論法で示せ。
\( \varepsilon – \delta \) 論法で書き直すと、
\[ \exists \varepsilon > 0 , \forall \delta > 0 \quad s.t. \quad \exists x \in \mathbb{R} , 0 < | x | < \delta \quad and \quad |f(x)-1| \geq \varepsilon \]
となる。これを示す。
\( | x | < \delta \) より
\( -\delta < x < \delta \)
となります。この範囲を満たす \( x \) なら良いので。
\( x= -\frac{\delta}{2} \) で考える。
\begin{eqnarray}
| f(x) -1 | &=& |-\frac{\delta}{2} -1| \\
&=& \frac{\delta}{2} + 1 \quad (∵ \delta > 0 )) \\
& \geq & \varepsilon
\end{eqnarray}
を満たす \( \varepsilon \) であれば、任意の \( \delta \) で成立するので、
\( x=0 \) で \( f(x) \) は \( 1 \) に収束しない。
と証明できました。
では、次に \( x=0 \) で \( f(x) \) が収束しない事を証明していきましょう。
上記の証明は収束値を \( 1 \) と指定していましたが、今回は収束値を任意の実数 \( a \)とします。
そうする事で、全ての実数で収束しない事を示します。
\[
f(x) =
\begin{cases}
x+1 \quad (x \geq 0) \\
x-1 \quad (x < 0 ) \\ \end{cases} \]
となる関数に関して、\( x=0 \) で収束しないことを示せ。
となる事を \( \epsilon – \delta \) 論法で示せ。
\( \varepsilon – \delta \) 論法で書き直すと、
\[ \exists \varepsilon > 0 , \forall \delta > 0 \quad s.t. \quad \exists x \in \mathbb{R} ,\forall a \in \mathbb{R} ,0 < | x | < \delta \quad and \quad |f(x)-a| \geq \varepsilon \]
となる。これを示す。
\( | x | < \delta \) より
\( -\delta < x < \delta \)
の範囲の \( x \) なら何でも良い。
(1). \( a \geq 0 \) の時、
\( x= -\frac{\delta}{2} \)
とすると、
\begin{eqnarray}
\quad |f(x) – a | &=& |-\frac{\varepsilon}{2} -1 -a | \\
&=& \frac{\varepsilon}{2} +1 +a \quad (\varepsilon > 0, a \geq 0 ) \\
& \geq & \varepsilon
\end{eqnarray}
を満たす \( \varepsilon \) で良い。
(2). \( a < 0 \) の時、
\( x= \frac{\delta}{2} \)
とすると、
\begin{eqnarray}
\quad |f(x) – a | &=& |\frac{\varepsilon}{2} +1 -a | \\
&=& \frac{\varepsilon}{2} +1 -a \quad (\varepsilon > 0, a < 0 ) \\
& \geq & \varepsilon
\end{eqnarray}
を満たす \( \varepsilon \) で良い。
(1).(2)より、
\( x=0 \) で \( f(x) \) は収束しない。