ε – δ 論法

1.ε-δ論法

\( \varepsilon – \delta \) 論法

・解析学に置いて、実数値を用いて極限を議論する方法。

・19世紀に発案。

・関数の極限を厳密に議論する際によく使う。

下記からは、数学記号を多用するので、

次のページを参考にしてください。

関連 >> 数学記号と意味

関数値の収束
\[ \lim_{x \to a} f(x) = b \]

↓ \(\varepsilon – \delta \) 論法で書き直し

\[ \forall \varepsilon > 0 , \exists \delta > 0 \quad s.t. \quad \forall x \in \mathbb{R} , 0 < | x-a | < \delta \to |f(x)-b| < \varepsilon \]

と表せる。

 

これの意味は、

任意の\( \varepsilon ( \forall \varepsilon ) \) に対して、\(\delta \)が存在する( \( \exists \delta \) )。

どのような\( \delta \)か( \( s.t. = such \quad that \)以下説明)というと、

もし\( |x-a| < \delta \) ならば、\( |f(x)-L| < \varepsilon \) となるような \( \delta \)。

 

そのまま読んでみました。

分かりやすい文にします。

「任意の \( \varepsilon \) に対して、もし\( |x-a| < \delta \) ならば、\( |f(x)-L| < \varepsilon \) となるような \( \delta \)が存在する。 」

「この時 \(\lim_{x \to a} f(x) = b \) となる事が証明できる。」

私はこの式を見て、眠たくなりました。

みなさんも頑張って

何故このように議論できるのか?
\[ \forall \varepsilon > 0 , \exists \delta > 0 \quad s.t. \quad \forall x \in \mathbb{R} , 0 < | x-a | < \delta \to |f(x)-b| < \varepsilon \]

ある任意の正の数 \( \varepsilon \) を決めると、適当な \( \delta \) が存在する、という事だ。

そして、\( 0 < |x-a| < \delta \) を満たす全ての実数 \( x \) に対し、\( |f(x) -b | < \varepsilon \)

が成り立つ。

\( \varepsilon \) は有限の値だが、任意なので好きなだけ小さく選んでも良い。

 

少しだけ、具体的に考えてみる。

\( \varepsilon_1 \) に対応して、\( \delta_1 \) が存在し、

\[ 0 < |x-a| < \delta_1 \to |f(x)-b| < \varepsilon_1 \]

が成り立つ。

次に \( \varepsilon_2 (< \varepsilon_1) \) に対応して、\( \delta_2 \) が存在し、

\[ 0 < |x-a| < \delta_2 \to |f(x)-b| < \varepsilon_2 \]

が成り立つ。

この式に少し付け加えると、

\[ 0 < |x-a| < \delta_2 \to |f(x)-b| < \varepsilon_2 < \varepsilon_1 \]

となる。

そのため、ものすごい小さい \( \varepsilon ‘ \) 選び、

それに対応した \( \delta ‘ \) を決めておけば、

\( \varepsilon ‘ \) 以上の \( \varepsilon \) に関して、\( \delta ‘ \)

が成り立つ。

逆に、小さい \( \varepsilon \) で \( \delta \) が存在しなければ、

任意の \( \varepsilon \) に対して、適当な \( \delta \) が存在するという論理を満たさない。

これが極限を議論できる理由である。

 

↓ \( \varepsilon \) を小さくしても成り立つ。

さらにかみ砕いて

どんなに小さな \( \varepsilon \) を考えても、

\( 0 < |x-a| < \delta \) ならば、\( |f(x) -b | < \varepsilon \)

になるような \( \varepsilon \) があるなら、

\[ \lim_{x \to a} f(x) = b \]

である。

 

2.ε-δ論法 (証明)

\( \varepsilon – \delta \) 論法で \( \lim_{x \to 2} ( 3x +1 ) = 7 \)

を証明せよ。

例).

 \( \varepsilon – \delta \) 論法で書き直すと、

\[ \forall \varepsilon > 0 , \exists \delta > 0 , s.t. \forall x \in \mathbb{R} , 0 < |x-2| < \delta,\to |f(x)-7| < \varepsilon \]

となる。これを示す。

\( |x-2| < \delta \) であれば、

\begin{eqnarray}
| (3x+1) – 7 | &=& |3x-6| \\
&=& 3|x-2| \\
< 3 \delta \end{eqnarray}

 よって、

\begin{eqnarray}
3\delta &<& \varepsilon \\ \delta &<& \frac{\varepsilon}{3} \end{eqnarray}

 となる \( \delta \) をとれば、\( |f(x) -7 < \varepsilon| \) を満たす。

 従って、\( \lim_{x \to 2} ( 3x +1 ) = 7 \) を示せた。

 

例題

\( \varepsilon – \delta \) 論法で次の極限を証明せよ。

(1). \( \displaystyle \lim_{x \to 2} (x^2 + 3x) = 10 \)

(2). \( \displaystyle \lim_{x \to 1} \frac{1}{1+x} = \frac{1}{2} \)

例題1).

 \( \varepsilon – \delta \) 論法で書き直すと、

\[ \forall \varepsilon > 0 , \exists \delta > 0 , s.t. \forall x \in \mathbb{R} , 0 < |x-2| < \delta,\to |f(x)-10| < \varepsilon \]

 となる。これを示す。

 \( | x-2 | < \delta \) であれば、

\begin{eqnarray}
| x^2 +3x -10 | &=& | (x-2)(x+5) | \\
&=& |x-2||x+5| \\
&=& |x-2||(x-2)+7|
& \leq & |x-2|(|x-2|+7)
\end{eqnarray}

 ここで \( \delta = min(\frac{\varepsilon}{8} , 1) \) と置く。

 \( min(a,b) \) は \(a,b\) どちらか小さい方を選ぶという事です。

 つまり、\( |x-2| < \frac{\varepsilon}{8} \) と \( |x-2| < 1 \) が成り立つ

\begin{eqnarray}
|x^2+3x-10| & \leq & |x-2|(|x-2|+7) \\
& < & \frac{\varepsilon}{8}(1+1) \\ & = & \varepsilon \end{eqnarray}

 よって、任意の \( \varepsilon \) を決めれば、

 \( \delta = min(\frac{\varepsilon}{8},1) \) と \( \delta \) を決めればよい。

 与式の証明が出来た。

 

例題2).

 \( \varepsilon – \delta \) 論法で書き直すと、

\[ \forall \varepsilon > 0 , \exists \delta > 0 , s.t. \forall x \in \mathbb{R} , 0 < |x-1| < \delta,\to |f(x)-\frac{1}{2}| < \varepsilon \]

 となる。これを示す。

 \( | x-1 | < \delta \) であれば、

\begin{eqnarray}
| \frac{1}{1+x} – \frac{1}{2} | &=& |\frac{1}{2}\frac{1-x}{1+x} | \\
&=& \frac{1}{2}|\frac{x-1}{x+1}|
\end{eqnarray}

 ここで、下記の不等式を用いる。

\begin{eqnarray}
|1+x| + |1-x| & \geq & |(1+x) + (1-x) | = 2 \\
|x+1| & \geq & 2 – |x-1|
\end{eqnarray}

 これを用いると、

\begin{eqnarray}
| \frac{1}{1+x} – \frac{1}{2} | &=& \frac{1}{2}|\frac{x-1}{x+1}|\\
& \leq & \frac{1}{2} \frac{|x-1|}{2-|x-1|} \\
\end{eqnarray}

 となるので、

 ここで \( \delta = min( \varepsilon , \frac{3}{2}) \) と置く。

 \( min(a,b) \) は \(a,b\) どちらか小さい方を選ぶという事です。

 つまり、\( |x-1| < \varepsilon \) と \( |x-2| < \frac{3}{2} \) が成り立つ

 よって、

\begin{eqnarray}
| \frac{1}{1+x} – \frac{1}{2} | & \leq & \frac{1}{2} \frac{|x-1|}{2-|x-1|}\\
& < & \frac{1}{2} \frac{\varepsilon}{2-\frac{3}{2}} \\ & = & \varepsilon \\ \end{eqnarray}

 よって、任意の \( \varepsilon \) を決めれば、

 \( \delta = min(\varepsilon,\frac{3}{2}) \) と \( \delta \) を決めればよい。

 与式の証明が出来た。

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