2元1次方程式の整数解
1.ユークリッドの互除法のイメージ
まず、おさらい
\( aをb \)で割った余りを \( r \)、商を\( q \) とすると、
\[ a = qb +r \quad (0 \leq r < b) \]
と式で表せ、この時、
「\( aとb \) の最大公約数と \( bとr \) の最大公約数が等しい。」
この原理のため、また \( bとr \) に対して同じことを繰り返せば、
最終的に最大公約数が出てくるという訳だ。
実際に\( 377と221 \)を例に互除法を行っていきます。
\begin{eqnarray}
377 &=& 1 \cdot 221 + 156 \\
221 &=& 1 \cdot 156 + 65 \\
156 &=& 2 \cdot 65 + 26 \\
65 &=& 2 \cdot 26 + 13 \\
26 &=& 2 \cdot 13
\end{eqnarray}
よって、最大公約数が \( 13 \) と求まりました。
この最大公約数が何故求まるのか分かりやすいように
\( 377と221 \)、それと余りを最大公約数() \(13\) )の積で
表す。(補足:\( 377 = 29 \cdot 13 \quad ,\quad 221 = 17 \cdot 13 \))
\begin{eqnarray}
( 29 \cdot 13 ) &=& 1 \cdot ( 17 \cdot 13 ) + ( 12 \cdot 13 ) \\
( 17 \cdot 13 ) &=& 1 \cdot ( 12 \cdot 13 ) + ( 5 \cdot 13 ) \\
( 12 \cdot 13 ) &=& 2 \cdot ( 5 \cdot 13 ) + ( 2 \cdot 13 ) \\
( 5 \cdot 13 ) &=& 2 \cdot ( 2 \cdot 13 ) + ( 1 \cdot 13 ) \\
( 2 \cdot 13 ) &=& 2 \cdot ( 1 \cdot 13 )
\end{eqnarray}
ここで色んな見方が出てくると思う。
① この計算は、ただ最大公約数という一つの単位で
差し引きをしているだけのように見えるかもしれないし、
② 全ての式で割れる数(最大公約数)は蚊帳の外で、
計算しているように見えるかもしれない。
\begin{eqnarray}
13( 29 &=& 1 \cdot 17 + 12) \\
13( 17 &=& 1 \cdot 12 + 5) \\
13( 12 &=& 2 \cdot 5 + 2 )\\
13( 5 &=& 2 \cdot 2 + 1 ) \\
13( 2 &=& 2 \cdot 1 )
\end{eqnarray}
そんな見方で見ていただけると良いです。
①のように、もし世界が100円玉のみで生活をしているなら、
何回も差し引きした最終結果は、10円や50円にならずに、
100円になるはずです。
\( 377と221 \) の二つの数の世界では、その単位が最大公約数
\(13\) というだけです。
その単位が最大公約数となる理由は②のような考えで、
互除法の原理から、全ての式の数字が最大公約数13でくくれるからです。
このイメージで互除法を行ってもらえると幸いです。
ここまで言いましたが、実は少し疑問が残る個所があります。
\( 377 = 29 \cdot 13 \quad ,\quad 221 = 17 \cdot 13 \)
なので、\( 29 と 17 \) は互いに素なのですが、
その \( 29から17 \) を引いた \( 12と17 \) は互いに素になる
のかという疑問です。
つまり上の話で行けば、\( 29と17 \)の世界では単位が\(1\)(:最大公約数)
になるのかという事です。
下記の補足証明が必要です。
\( aとb \) が互いに素の時、\( bと(a – nb) \) も互いに素な事を示せ。
( \( n \in \mathbb{N} \) :nは自然数という意味)
これは、このページの一番下で証明しているので、
見たい方は下にスクロールしてください。
2.最大公約数の性質
2つの自然数 \( A、B \) の最大公約数を \( G \) とすると、
\[ AX + BY = G \]
を満たす整数 \( X、Y \) が存在する。
特に \( A、B \) が互いに素ならば、
\[ AX + BY = 1 \]
を満たす整数 \( X、Y \) が存在する。
たとえば、
\( 377X + 221Y = 13 \)
を満たす整数 \( X、Y \) が存在する。
という事である。
だが、
\( 377X + 221Y = 1 \)
は存在しない。右辺が最大公約数で割り切れないためです。
上の話で言えば、\( 377と277 \) をいくら差し引きしようと
しても、最大公約数(\( 13 \))という単位が残ってしまうためである。
そのため以下も成り立つ。
整数を係数とする方程式
\[ AX + BY = C \]
が整数解をもつための条件は、\( C \)が\( AとB \)
の最大公約数\(G\)で割り切れる事である。
つまり、
\( 377X + 221Y = 1 \)
だとか、
\( 377X + 221Y = 15 \)
とかは整数解 \(X,Y\) は存在しないという事である。
3.1次不定方程式の解法 (=0)
\[ 2x + 3y = 0 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
\( 2x = -3y \)
となる。\(2xは3\)の倍数でなければならないので。
\( x = 3k \quad ( k \in \mathbb{Z} ) \)
となるので、
\( y= -2k \)
よって、整数解は
\( (x,y) = (3k , -2k) \)
となる。
\[ 8x + 12y = 0 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
\( 8x + 12y = 0 \quad \to \quad 4(2x + 3y) = 0 \)
よって、
\( (x,y) = (3k , -2k) \quad (k \in \mathbb{N}) \)
4.1次不定方程式の解法 (=G)
\[ 2x + 3y = 1 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
まず、特殊解を求める。(整数解を一つだけ求める。)
\( (x,y) = (2,-1) \)
よって、
\( (2x + 3y) + (2 \cdot 2 + 3 \cdot (-1)) = 0 + 1 \)
\( (x,y) = (3k, -2k) \) の時、\( 2x + 3y = 0 \)
ゆえに、
\( (2 \cdot 3k + 3 \cdot (-2k)) + (2 \cdot 2 + 3 \cdot (-1)) = 0 + 1 \)
\( 2 \cdot (3k + 2) + 3 \cdot (-2k-1) = 1 \)
∴ \( (x,y) = (3k+2 , -2k -1 ) \)
\[ 8x + 12y = 4 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
\( 4(2x + 3y) = 4 \cdot 1 \)
∴ \( (x,y) = (3k+2 , -2k -1 ) \)
\[ 8x + 12y = 3 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
\( 8と12 \) の最大公約数は \(4\) であるが、
右辺は \( 4 \) で割れないので、整数解はない
5.1次不定方程式の解法 (=C)
\[ 2x + 3y = 3 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
まず、特殊解を求める。(整数解を一つだけ求める。)
右辺が3なので、例題1(=G)の特殊解の3倍となる。
\( (x,y) = (6,-3) \)
\( 2x’ + 3y’ = 0 \)
になる時の解が、
\( (x’,y’) = (3k,-2k)\)
よって、
\( (x,y) = (3k+6 , -2k-3) \)
\[ 8x + 12y = 8 \]
となる。整数解\( x,y \)を求めよ。
\( 4(2x + 3y) = 4 \cdot 2 \)
まず、特殊解を求める。(整数解を一つだけ求める。)
右辺が\( 4\cdot 2 \)なので、例題1(=G)の特殊解の2倍となる。
\( (x,y) = (4,-2) \)
\( 2x’ + 3y’ = 0 \)
になる時の解が、
\( (x’,y’) = (3k,-2k)\)
よって、
\( (x,y) = (3k+4 , -2k-2) \)
補足
\( aとb \) が互いに素の時、\( bと(a – nb) \) も互いに素な事を示せ。
( \( n \in \mathbb{N} \) :nは自然数という意味)
\( bと(a – nb) \) の最大公約数を \( g \) とすると、
\( b=cg \quad , \quad a-nb = dg \quad (c,d \in \mathbb{Z} : c,dは整数という意味) \)
二個目の式に、一個目の式を代入すると、
\( a-n(cg) = dg \quad \to \quad a = (d+nc)g \)
よって、\(aとb\)の公約数が\(g\)となるが、
\(aとb\)は互いに素なので、\( g=1 \) となる。
ゆえに、\( bと(a-nb) \) も互いに素になる。
\(A,B\) の最大公約数を \( G \) とすれば、互除法を繰り返して、
\begin{eqnarray}
A &=& Q_1 B + R_1 \\
B &=& Q_2 R_1 + R_2 \\
R_1 &=& Q_3 R_2 + 0 \\
∴ R_2 = G
\end{eqnarray}
これを式変形して、
\begin{eqnarray}
R_1 &=& A – Q_1 B \\
R_2 &=& B – Q_2 R_1 \\
∴ R_2 = G
\end{eqnarray}
となる。よって、
\begin{eqnarray}
G &=& R_2 \\
&=& B – Q_2 R_1 \\
&=& B – Q_2 (A -Q_1 B) \\
&=& (1- Q_1)B – Q_2 A
\end{eqnarray}
\( Q_n \) は整数なので、
\( AX +BY = G \)
となる整数\(X,Y\) が存在することが分かる。